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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

戦争に翻弄される国

                 ≪九月二十五日≫     -壱-

  夜になって、シュラフに潜り込んでも、暑苦しさを感じない。
 お陰で気持ちよく眠れて、目覚めが良いようだ。
 アフガニスタンでの最初の朝。

 朝食を部屋に運んでもらう。
 コーヒーにボイルド・エッグでモーニングを取る。
 朝食をベッドで取った後、ネパールで買った黒字に、金の竜の刺繍の入った服を着込んで街に出た。

 昨日書いた、日本への便りを出そうと、ポスト・オフィスを探すが休みでした。
 マネー・チェンジに欠かせない、BANKも閉館。
 よく話を聞いてみると、週休三日制で、金曜日から日曜日までが休みなのだそうな。

 お陰で、闇屋がBANKより、マネーチェンジ・レートが悪いのもうなずける話である。
 チェンジしたい時に出来ないから、闇屋が強気に出る。
 金曜日から日曜日に掛けては、闇屋が銀行の代わりをしている事になるのだから、長く滞在しない旅行者にとっては、闇屋は欠かせない存在だという事になるのだろう。
 こんな事って、初めてだ。

 郵便局が閉まっている間でも利用できる、”C、P、O”(中央郵便局)があることを教えてもらい、探して歩く事にした。
 青い空が広がっていて、気持ちの良い一日になりそうだ。

 昨日到着した、バス・ターミナルになっている広場に出る。
 日曜日と言えども、さすがに人通りが多く、広場では子供達が又、朝早くから凧揚げを楽しんでいる。
 すぐ近くに見える、岩と土だけの山の斜面には、モンゴル系の人たちの住処なのだろう、土や岩肌と同色の建物が、カメレオンのように同化して建ち並んでいるのが分る。

 首都カブールに、相応しくない光景だろうが、これがこの国の現状なのだろう。
 貧しい、どこか日本人に良く似ている、モンゴル系の人たちを見ていると、どこか寂しいものを感じてしまっている。
 暫くの間、今俺が砂漠の中にいることを忘れさせてくれる街、それがカブールと言う街。
 ここはまさしく、砂漠のオアシスだ。

 この国が、これから四、五年後には、ソ連の介入を受けて戦場と化すのであるから、今の彼らからすると想像すら出来ないことではあろうか。
 そして、その二十年後、また戦火に見舞われるのだから、悲しい運命に翻弄される国といっていいだろう。
 悲しい話であるが、これがこの国の現実なのだ。

                   *

  C.P.O(中央郵便局)をやっとの思いで見つけ出し、ドアを開けると係員らしき人が一人で応対していた。
 スタンプを見てビックリ。
 封書一枚が25Afg(180円)、ハガキが22Afg(160円)と、またまた宿泊費より高いときているkら悔しい。
 お陰で今日出した日本への通信費が119Afg(833円)と思わぬ出費に頭を抱え込んでしまう。

 お金と言うのは、出て行く時にはドンドン出て行くもので、C.P.Oからの帰りキッチン通りのバザールのまた立ち寄ってしまった。
 この辺の店と言おうか、カブールの街には、革製品の店があっちこっちにあり、店先にはこれでもかと思うほど、革製品が並べられている。
 あっちこっちの店に顔を出しては、負けてくれるよう交渉するが・・・なかなか。

       店員「ベリー、チープ!安いよ!安いよ!」

 日本語で売り込みをしてくる。
 まけても、3~4割程度まで・・・・なかなか、安くはならないようだ。
 結局、パスポート入れ(100Afg≒700円)と刺繍の入った黒のチョッキ(US10$≒420Afg≒2940円)を買ってしまった。
 また荷物を増やしてしまった。

 あまりにも使いすぎだ。
 物価が安いと、ついつい使い込んでしまう。
 お陰でお金が無くなって来て、仕方なく闇屋らしい店に飛び込んで、US30ドルばかり、マネーチェンジしてもらうはめに。

 買い物をした後は、近くのレストランで昼食をとり、ホテルに戻った。
 ホテルの中にある庭へ行くと、毛唐が6人集まっている。
 国から持参してきたカセット・テープをガンガン鳴らしながら、ハッシッシをパイプに詰めて気持ち良さそうに吸っている。
 女の子も、回って来たパイプを、咳き込みながら吸い出した。

       俺「何も、あんなに咳き込みながら吸わなくても・・・・。」

 そのパイプが俺の所にも回って来た。
 ありがたく一服吸ってみる。
 バンコックでもそうだったが、あまり効いて来ない。
 ”何でだろう!なんでだろう!”
 毛唐の旅行者の多くは、これら麻薬を手軽に、安く手に入れるために旅をしているのがほとんどと言っていいだろう。
 旅の目的が麻薬なのだ。

 荷物になるというのに、楽器やラジオを持って来ては、麻薬を吸引しながら音楽を聴いていると、何かが聞こえてくると言うのだ。
 ヨーロッパの音楽家たちは、麻薬によって音作りをしているものが多いと聞いている。
 日本人の音楽家たちも、それを聞きつけてやってき始めたという事らしい。
 とにかく、麻薬と言う奴はかなり古い歴史を持っていて、人との関わりも随分と長い。
 利用するものによっては、良薬にもなるし、身を滅ぼす薬にもなるという訳だ。

 毛唐たちはこうして、朝から晩まで、ハッシッシを吸って、流れる音楽に耳を澄ましている。
 彼らは、ジッと音を聞いているだけで、誰も行った事がない旅へと旅立っているのかもしれない。
 なぜ??俺には効かないのだろう???
 粗悪品なのだろうか。
 残念だ。

                     



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